2011年06月17日

消費税10%は焼け石に水。次に打つ手が日本の命運を決める。

政府・与党の「社会保障改革に関する集中検討会議」が、社会保障を目的として、消費税を2015年までに段階的に引き上げる方針を打ち出し、そろそろ大詰めです。昨年、根拠もなく自民党案の「10%」をマネして参院選で大敗を喫した菅首相にしては、日本の将来を見据えて、しぶとく取り組んでいると評価すべきでしょう。

消費税引き上げを歓迎する人がいるわけがありませんが、賛成派、反対派を問わず、「10%まで引き上げれば財政赤字を大幅に解消できるだろう」というのが、多くの人々が抱いているイメージであろうと思います。

その上で「引き上げはやむをえない」とする賛成派と、「消費税は上げずに、公務員の給料を削減したり、経済を活性化したりすることによって財政状況をよくしていくべきである」とする反対派に分かれるわけです。

しかし、消費税を上げれば、本当に日本の財政は回復するのでしょうか? 今回はその点について検討していきたい、と思います。

現在の日本では、少子高齢化が進行する中で社会保障費が増大し、年金や保険料にあてる保険料が不足しています。それは本来、税金で賄うべきものですが、財源がないため、国債を発行して財政赤字を将来に先送りする事態となっています。その金額はもうすぐ900兆円に至ります。

借金が膨大であるだけに、利子の返却だけでたいへんです。学校を建てたり、旅客機を買ったりする金額など、「あっ」という間に達してしまいます。
ご興味のある方は、次のサイトをのぞいてみてください。
日本の借金時計

              ◇             ◇

まず、財政赤字を放置しておくと、日本は現在のギリシャやかつてのアイルランド、ロシアのようになってしまうと思っている人が多いと思いますので、この点を正したいと思います。

幸いにして、この考えははずれています。デフォルトした国では、その国債の多くを外国人が持っていました。一方、日本国債の場合は95%を日本人が持っています。いわば「家庭内借金」です。消費者金融にお金を借りて返せなければ、ヤクザが取り立てに来ますが、お父さんがお母さんにお金を借りたって、そこまでのことには普通はなりません。
しかも、保有者の多くは銀行です。償還期間が来たら政府に引き取ってもらって、お金に変えてもかまわないのですが、日本経済が悪化したら自分の首が絞まりますから、持っているしかありません。

とは言え、この速度で借金が増えていけば、いつかは破綻すると考えるのが普通でしょう。問題はそれがいつかです。

日本の個人資産は、約1400兆円あると言われています。ここから住宅ローンなどの負債約300兆円を引くと、約1100兆円となります。
財政赤字は約900兆円ですから、1100兆円−900兆円=200兆円。
1年間の赤字を40兆円とすれば、200兆円÷40兆円=5年。

つまり、国内で国債を買い取る限度は、単純計算ではあと5年ということになります。そのあとは外国人に買ってもらうしかありません。その際、今のように金利が1%では投資対象としての魅力が薄く、相手にされないと考えて金利を2%、3%へ上げると、借金は2倍、3倍のスピードに加速することになります。
(経済の改善には、ほかには日銀がお札を刷りまくるという方法もあり、それも現在のようなデフレ下では悪くないと思いますが、本筋ではないので、横に置きます。)

              ◇             ◇

ここまでの話によって、5年で財政を大幅に改善する目処を立てないとなると、大変だということがわかったと思います。実際にはプライマリーバランスから見てもう少し大丈夫という考えもありますが、市場は先読みして動きますから、油断は禁物です。

そこで、ほかの税と比べて圧倒的に強い財源調達力を持つ消費税を引き上げるという結論になるわけですが、野口悠紀雄・早稲田大学院教授は、「消費税を10%へアップする財政収支改善効果は、公債発行額で言って2年、公債依存度で見ても7年程度しか持たない」とシミュレーションしています。


noguchi-yukio.jpg


このグラフを見ると、消費税引き上げによって、公債依存度は一時的に低下するものの、焼け石に水で、どんどん上昇していくのがわかると思います。まさに破滅への道をまっしぐらに進んでいます。

それでも、消費税を2011年に10%に引き上げた場合、2011年度並みにもどるのは2036年と遅いですが、2017年に引き上げた場合は、わずか2年、早くも2019年には2011年度並みにもどってしまうのです。

余談ですが、消費税というものは、そのすべてが国に入るわけではありません。
1. 消費税5%アップによる税収の増額は、約12兆5000億円です。
2. 配分は、国:4、地方:1です(国の取り分は、約10兆円)。
3.しかも、国に配分されたうちから、29.5%が地方交付税交付金となります(2兆9億円が地方へまわり、国が使えるのは7兆1億円)
そのようなこともあり、消費税を10%まで引き上げても、その効果は限定的なのです。

野口悠紀雄氏の予測を真実とするなら、消費税アップをどう考えるべきでしょうか?
無駄なのでしょうか? いいえ、そんなことは、ありません。今年にも消費税を10%まで、できれば15%まで上げるべきなのです。そして、時間かせぎをして、ほかの手を打っていかなくてはなりません。TPP(環太平洋経済連携協定)によって工業製品の輸出を増やし、アジア太平洋諸国との交流を活発にして経済を活性化していくとか、公務員の給与改革を行うとか、相続税を大幅に上げるとか、処方箋はいろいろあります。

お互いつらいですが、消費税アップは受け入れるべきでしょう。
消費税では低所得者ほど切実に影響するという「逆進性」が問題となりますが、それを言えば社会保障費だって同じです。

そして、財政再建は、長期的視野で見れば、少子高齢化の状況を改善するのが最もよい解決方法ですから、何よりも少子化対策にも力を入れるべきでしょう。
最終的には、少子高齢化と人口減の状況を脱することが、財政再建の鍵となります。

消費税10%へのアップによってできることは、結論から言えば「時間かせぎ」だけです。しかし、重要な意味を持っています。
ほかの手を打たなければ、あるいは打つ手を間違えたら消費税10%へのアップは無駄に終わり、日本は沈没します。
posted by たぬたぬ at 10:08| Comment(6) | TrackBack(0) | 財政 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
更新されるのをいつも楽しみにしています!

ところで、消費税アップについてですが、反対です!
未来永劫にわたって反対という訳ではありませんが、
当面は増税には賛成できません。

今のような将来に希望の見えない状況で増税をして本当に大丈夫でしょうか。
経済の先行きに明るさが見え、少子高齢化の改善がみられるまでは増税は逆効果にしかならないと思います。

増税をせずに国の借金を増やさぬ方法として、ぜひとも横に置いた「これ↓」

>(経済の改善には、ほかには日銀がお札を刷りまくるという方法もあり、それも現在のようなデフレ下では悪くないと思いますが、本筋ではないので、横に置きます。)

これについて検討をして欲しいものです!
Posted by apollo at 2011年06月17日 17:53
いちばん怖いのは、消費税アップにはわずかな「時間かせぎ」の意味しかないという認識を持っている人が、国会議員を含めて、非常に少ないことです。

消費税を上げれば、なんとかなると思っていますけど、大まちがい!

IMFが消費税を15%まで引き上げるよう、勧告してきましたけど、これだって10%よりは「時間かせぎ」の期間が長くなる、というだけです。
かつてIMFに乗っ取られた韓国のようになりたくなかったら、勧告を受け入れるのも(オヤジギャグじゃないですよ)、ひとつの選択です。

日銀がお札を刷りまくるというのは、インフレ政策ですね。一歩間違うと国民を悲惨な状況へ陥れ、海外にまで影響を及ぼしてしまいますが、多少ならやってもいいんじゃないかな、という気がします。
Posted by 広沢(たぬたぬ) at 2011年06月17日 18:37
バカですか?

消費税は上げれば上げるほど税収が減って財政が悪化するんだよ。歳入が減少し続け、歳入に占める消費税の割合が増え続けている理由も考えられないの?

たとえば事業税は売上を自己投資して運用したあとにかかるある種の配当であり、そこに成長機会が存在するが、消費税には事業税のような自己投資機会がまったく存在しない、まさに「種籾を食う」税。消費税なんてのは数ある税の中でも最悪の税なんだよ。

特に日本で消費税と呼んでいるものは付加価値税100%であり、付加価値税とは即ちGDP税なので極悪さに磨きがかかるってもんだ。
Posted by at 2011年12月11日 15:27
コメ欄の広沢みたいなバカもよくいるよなー。

供給能力が十分である限りインフレは暴走したりはしねぇっつーのw

逆に供給能力不足が原因のインフレは暴走する。「必要なのに足りないので通貨が価格決定能力を喪失した状態」と「通貨発行量に応じた価格」を混同するって奴な。

なんでこうも経済の因果関係を理解しないで発言できる奴ばっかりなんだか。
Posted by at 2011年12月11日 15:32
税率UPが税収UP対策になれば受け入れるべきかも?

税率アップが、景気減速とデフレ加速&税収ダウンにならないよう手当ができる国家で有って欲しいと思うが。。

民主党政権下では、無理であろう。

外圧に屈し、能力のない政治家が官僚に操られ動けば動くほどに事態が悪化しているようなww

インフレ懸念はデフレ克服の後で論じるべきかも知れない。

次に打つ手=民主党政権下ではなく他の政権政党による次の一手を待つ他なかろう。

とはいえ、時間は限られているような気がする。
Posted by kuri at 2012年06月30日 19:17
過去にたくさんあった「国の末期」のような姿になっているのが怖いです。
漢の末期も清の末期も帝政ロシアの末期も、「こうすべきだ」とわかっていても、それができない状態となっていました。
民主党の役割は終わりましたが、最後に老朽化した自民党ができなかったことをしたことは評価したいと思います。
ただし、消費税をアップしても、それを生かすか、無駄に終わらせるかが問われます。
消費税アップ分のうち、国に入るのは一部に過ぎないですし、それを全部、財政赤字の補填に使ったとしても、野口悠紀雄氏のように財政改善効果は何年かしか保たないと計算する人もいるわけです。
政治家は、こういうきちんとした学者の言うことはもう少し真面目に聞いた方がよいと思んですよ。
Posted by たぬたぬ at 2012年07月17日 21:31
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