2011年08月25日

カダフィ後のリビア、アサド後のシリア

リビアの独裁者カダフィ政権が、事実上の崩壊に追い込まれました。今、多くの新聞では「カダフィ後の受け皿をつくるのは困難だが、新体制を模索していかなくてはならない」という論調が大勢を占めています。

本当にそう言ってよいのでしょうか?

リビアでの虐殺の悲劇を減らすためには、軍事介入が必要であったことは事実です。ただし、このような介入を行う場合には、その目的を明確にし、犠牲や被害を最小限に抑える必要があります。
そうでないと、「結局は、リビアの石油狙いだろう」という憶測が必ず出てきます。

実際、リビアは、産油量そのものは多くはありませんが、硫黄分が少ない良質な原油を産します。また、砂漠には珍しく地下水脈もあり、パイプラインで供給して、一部では農業も行われています。国民の就学率は高く、経済発展への素地はあると考えられます、したがって、「軍事介入はリビアの石油狙いだろう」という見方は必ずしも的外れとは言えません。アメリカ、イギリス、フランスという軍事介入にかかわった国々の歴史から見ても、何の利益もなしに動くことは、まず考えられません。

EUは、「カダフィ後のリビアを支援するため、複数のシナリオを用意している」と発表しています。その「シナリオ」の内容はわかりませんが、上記のような批判をかわすためにも、リビアへの介入はあくまで「虐殺を防ぐために行った」という目的を明確にし、期間を限定して行うべきでしょう。
国連ですら信用されていないリビアで軍が長期間逗留すれば、問題を引き起こします。
「受け皿」をつくるのは、至難です。反体制派の国民評議会がそれになり得るとは、言い切れません。
しかし、ソマリアのような混迷に陥らないようにする必要があります。

             ◇             ◇

カダフィが支配するリビアとよく似た国が、シリアです。「中東のスフィンクス」と呼ばれた先代のハーフェーズ・アル=アサドの子、バッシャール・アル=アサドが支配しています。

シリアへの対応は、リビア以上に困難です。シリアはトルコ、イラク、ヨルダン、レバノン、イスラエルに国境を接し、中東のほぼ中央に位置して、イランとは軍事同盟に近い緊密な関係にあります。

アサド体制が崩壊すれば、イランが介入し、イスラムの宗派間、部族間の争いが激化していく可能性が高いと思われます。つまり、シリアにはリスクしかありません。

リビアと同様、政府に従わない人々への虐殺の悲劇を減らすためには、シリアでも軍事介入が必要です。しかし、ハードルが高過ぎて各国の足並みがそろわず、宙ぶらりんの状態となっています。

アメリカやヨーロッパ諸国は、国連でシリアへの武器供与防止などを定めた決議の採択をめざしていました。しかし、ロシアと中国の反対を受け、シリア非難の議長声明を発するだけで終わりました。つまり実効性は、ありません。

ロシアから見れば、シリアは長年の友好国です。中国から見れば、安保理が人権弾圧国に介入するのは、好ましくありません。自分自身も人権弾圧国であるからです。
日本としては、リビアに引き続き、シリア独裁政権を崩壊に導き、中国や北朝鮮を干し上げていきたいところですが、一筋縄では行かないでしょう。

              ◇             ◇

この先は、余談です。
最近、ジャスミン革命が中国へ飛び火するのではないかという憶測も出ているようです。

結論から言えば、その可能性はほとんどない、と言うべきでしょう。

中国共産党はジャスミン革命が中国へ飛び火して、かつての天安門事件のような事態に発展することに対して、非常に強い警戒心を持って臨んでいます。
胡錦濤みずから「仮想空間への管理水準を高めよ!」と檄を飛ばして反政府的な書き込みを監視し、さらに数千人もの人民に、政府よりの発言をバラまかせていると伝えられています

中国への波及は難しいだろうと、思います。

              ◇             ◇

「中東の春」が、この先どうなるかと言えば、この民主化運動は、もともとフェイスブックやツイッターを介した一種のお祭り騒ぎのようなもので、確固としたイデオロギーに基づいているわけではありません。

言い方は悪いですが、ネットユーザーが不用意な発言をした人のブログに集まって炎上させたり、ネット上のハッカー集団アノニマスが気分で盛り上がってソニーを攻撃したりしたのと、どこか共通したものがあります。

日本の歴史で言えば、一揆や米騒動のようなもので、ただの「世直し運動」に過ぎません。したがって、先の見通しはなく、諸国は再び軍政に支配される可能性も少なくありません。

ジャスミン革命は失速し、中東は混迷の度を深めることになるでしょう。
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posted by たぬたぬ at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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