2016年07月11日

民進党が起死回生のために外してはならない「憲法改正」



参議院の定数は242名で、任期は6年。その半数が3年ごとに改選される。今回の参院選では、自民党は56議席、公明党は14議席を獲得し、安倍首相が勝敗ラインに設定した与党の改選過半数(61議席)を大きく上回った。
さらに憲法改正に前向きなおおさか維新の会は7議席を獲得。
改憲勢力は参議院定数の3分の2を上回って与党が圧勝し、野党とくに民進党はみじめな敗北に終わった。

しかし、この困難な状況の中、気づいているかいないかはわからないが、実は民進党は起死回生のチャンスを迎えている。このチャンスを逃すと、もはや回復は不可能と言ってよいくらい重要なものだ。

『三国志』の愛読者なら、「街亭の戦い」をご存知であろう。蜀の軍師、諸葛孔明が部下の馬謖に「街亭を死守せよ」と命じたのにもかかわらず、自分の才気に過剰な自信を持つ馬謖が近くの山に登って魏軍を迎え撃ち、完敗した戦いである。このあと蜀が魏を攻略する機会はほとんど永久的に失われ、孔明は五丈原に病没し、国の滅亡へとつながった。

このチャンスは、いわば「街亭の戦い」にあたる。それは、憲法改正案の作成である。

               ◇              ◇

今回の参院選では、焦点とされたアベノミクスの背後に憲法改正問題が存在していた。岡田代表は「選挙運動中、安倍首相は憲法問題について語ることを避けた」などと批判していたが、大多数の有権者から見れば憲法改正が大きなバックボーンになっていたことは自明であり、岡田代表の批判は言い訳にしか聞こえない。

何にせよ、選挙結果から見れば、民意は憲法改正を望んでいると言ってよいだろう。

ただし、2012年4月に発表された自民党の「日本国憲法改正草案」は決して出来のよいものではない。叩き台レベルであり、むしろ「落第点」と言ってもよいくらいだ。
わかりやすい例としては、次のようなものがある。

第24条
家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。


「家族は、互いに助け合わなければならない。」と言われても、仲が悪い家もあれば、生き別れになっている家もあり、親子兄弟とも高齢や病気や貧乏で助け合えない家もある。国にとやかく言われる筋合いのものではない。

憲法とは、本来、国家権力という「怪物」を縛るためのものである。それなのに、自民党の草案にはこのように国民に妙な義務を押しつける条文が多く見られる。

もうひとつ、日本国憲法の中で最も重要な第13条を見てみよう。「えっ、一番重要なのは第9条じゃないの?」と思われるかもしれないが、第9条なんて、あってもなくても人権や民主主義とは関係がない。その証拠にアメリカには軍隊があるが、人権は保障され、民主主義も機能している。

さり気なくて目立たない条文だが、西洋の人権思想のエッセンスであり、日本国憲法の中で「これがなくなったら、憲法が憲法でなくなる」というキモの中のキモこそ、第13条である。

第13条の原文  
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


これが自民党草案では次のようになっている。

第13条
全て国民は、として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。


この条文を変更したのは、従来「公共の福祉という表現がわかりにくい」と言われてきたことを受けたものだろう。「公益及び公の秩序に反しない限り」と言うことで、「自分勝手な幸福や利益追求のために、ほかの人に迷惑をかけてはいけない」という意味が明確になる。
確かにその点は改善されているが、反面、人権は「公益や公序を守った上で」ということになって、その下に位置づけられることになりかねない。
また、「個人」という概念には、「ひとりひとりの人間」という意味が込められているのだが、「人」という茫洋とした表現に換えることで、主体性を持つ個人という人権思想の根幹がおかしくなってしまう。

この辺が「自民党案は立憲主義を理解していない」と言われるゆえんである。

このまま行くと、自民党案をベースに改憲の方向性が決められてしまうだろう。そこで民進党の出番があるのである。

               ◇              ◇

今回の選挙では日頃は自民党支持でありながら、憲法改正の方向性に不安を感じて民進党ら野党に票を投じた人も少なからずいたと思われる。そういう人たちも、民進党が頑なに憲法改正を拒むなら、完全に無価値な政党と見做すだろう。
反対に民進党がより適切な憲法改正の草案を提出するならば、「補完政党」としての価値を評価するに違いない。

私は改憲論者であるが、憲法は「変えさえすればよい」とは思っていない。そして、民進党については「リベラルの名に値しない、揚げ足取り政党」と見做しているが、ここで民進党が自民党案のおかしなところをひとつひとつ丁寧に正してくれるなら、次回は票を入れてもよい。

とにかく憲法改正は端緒についた。安倍首相自身も語っているように、これから議論していく段階である。

このチャンスを民進党が生かすことなく、逆に自民党が改憲賛成派・反対派両方の憲法学者の意見をしっかりと聞いて現在の草案の欠点を自ら正していったならば、民進党の出番をなくし、その復活を半永久的に封じることになるだろう。だから、憲法草案づくりは「街亭の戦い」なのである。

民進党の中には、憲法改正に前向きな議員もかなりいると伝えられている。民進党議員の奮起を願って止まない。

<補記>
民進党はいまだに政権政党を目指しているという。しかし、脇役をきちんと演じられない役者に、主役は務まらない。まして、以前に一度、主役を与えられたときに力不足を露呈させて降版したのだから、まずは脇役として力をつけて認められることが、主役をめざす最も確かな道であると思う。
10年か20年、もしかしたら50年以上かかるかもしれないが、それ以外の方法はないと知るべきだろう。



posted by たぬたぬ at 13:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 憲法・法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自衛隊だなんて(手足を縛られた組織)で国を守れる筈がないでしょう!!!
憲法改正して(敵国を追討ちし撃滅できる日本軍)にしなければ、中国は世界制覇に突き進む。

中国の謀略を止めるのは、 日本(軍)の存在しかありません。

民進党の皆さんは どちらを選択しますか?
●アジア諸国を守る自民党(日本軍)・・・アジアの守り神
●世界侵略に突き進む共産党(中国軍)・・・インベーダー
Posted by at 2016年11月17日 13:15
コメント、ありがとうございます。
何という、直裁なご意見(笑)。
私が立場上、オブラートに包んでいることを、正直に言って頂いたようなものですね。
自民党案には不備が山ほどあるのは事実ですが、民主党その他の考えは、結局は日本人から誇りを奪い、スポイルするものです。
憲法改正に参加してくれれば、そこのところもわかってくれるのでは、と淡い期待を込めて書いています。
Posted by 広沢(管理人) at 2016年12月26日 00:32
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