2017年01月21日

「トランプ大統領」誕生を機に、立て直すべき日本の防衛


高校時代、政治経済の授業で、「もし外国が攻めてきたら」という話になったことがある。
先生は言った。「軍隊を持つのは愚かだ。憲法違反の自衛隊なんかなくして、もし、外国が攻めてきたときは、みんなそれぞれ武器を取って戦うんだ!」

社会科の編集者となった今ならわかるが、この考えは大間違いである。
なぜなら、侵略軍から見れば、軍人と民間人の区別がつかなくなってしまうからだ。民間人が武器を持って襲ってきたら不安だから、最悪の場合、民間人を皆殺しにする事態に発展する。
そういう悲劇を避けるため、民間人が戦うときには、指揮官を置くこと、一定のマークをつけてレジスタンスであることを示すことなどが、国際法で定められている。

しかし、もっと大切なのはそういう隙を外国に与えないことである。そのためにはきちんとした軍隊が必要になる。

            ◇             ◇

ワシントンでは賛成派と反対派がぶつかり合う中、「アメリカファースト」を掲げるトランプ新大統領が誕生した。アメリカの経済・財政の復興を第一とする。今までのように「世界の警察官」的な役割も見直す。下手に訳すと、ニュアンスが飛びそうだ。

※新聞を読んでいたら「大国主義へ向かうのではないか?」などと書かれていたが、完全な捉え違いだ。ファーストとは「経済最優先」という意味で、海外への介入はむしろ縮小へ向かう。

トランプを解く鍵は、「正直」である。ウソを言わずに、白人中間層の本音を語ってきたから当選したのだ。
支持者は実直な中小企業主や農場主、商店のオヤジなどにイメージされる、地に足がついた考え方をする人々だ。その中間層を相手に、ごく現実的な話をしてきた。

言論の内容も、それなりに正論である。
たとえば、「オバマケア」。アメリカでは日本のような国の保険制度がないので、オバマは「すべての人に保障を」と考えたのだが、そのためには増税が必要になる。これに対しては、「アメリカは自己責任社会じゃないか。自分の身は自分で守ってくれ」ということだ。
たとえば、TPP。日本にとっては中国封じ込めの大戦略だったのでアメリカの不参加は残念だが、参加すれば有利になる産業が出る代わりに不利になる産業も出る。「オレは経営者として地獄を見てきた。犠牲者を出したくないんだ」ということだ。

そんなトランプが日本や韓国に突きつけているのは、「米軍撤退」である。トランプは正直に「アメリカ財政には余裕がない。キミたちのために、アメリカ人の命を犠牲にしたくもない。援助はするが、自分たちの戦いは自分たちで戦ってくれ」と言っているのだ。

実際、一度、沖縄から撤退してもらってもいいのではないか?
そして、基地で食べてきた大勢の沖縄県民が職を失い、尖閣諸島が中国の手に渡り、万座ビーチの沖を中国の艦艇が横行するようになれば、さすがにその意味もわかるだろう。

本質論としては、自国の防衛をいつまでも他国に頼っている方がおかしい。

日本の現状では、万一、1人でも自衛隊の犠牲者が出たら政権が転覆しかねないが、1人の戦死者も許されない軍隊など、笑止だろう。もちろん、誰だって戦争には行きたくないし、子どもを戦場へ送りたくないに決まっている。
しかし、軍事作戦には「必要な死」はあるし、国には誇りや存亡を掛けて戦わなければならないときがある。

そのためには、私は自分の息子が兵隊に行って犠牲になっても仕方がないと思うし、自分自身はすでにロートルで役に立たないが、いざとなれば戦闘機でぶつかっていくくらいの気概はあるつもりだ。

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トランプは非常に誤解が多い人物だが、日本史の中で似た人物を求めるなら、キャラは全然違うが坂本龍馬ではないかと思う。
観念論や理想論などカケラもなく、実利で相手を動かそうとする点。物事のタイミングを測る政治的カン。情勢を一瞬で引っ繰り返す突破力など、よく似ている。
反対派も多いが、期待している国民も多いのは、まさにそういう点なのだ。

トランプが大統領に就任して、アメリカ政治の大掃除が始まる。
アメリカは海外で戦争を起こして兵器を売ることで、財政を潤してしてきた。とくにブッシュ親子や国務長官時代のヒラリー・クリントンはひどかった。
その点、トランプはIS掃討を除けば戦争を起こさずに、真っ当にアメリカを立て直そうとしているようだ。と、なれば、高すぎる法人税を改革して海外に流出してしまった企業を呼び戻したり、公務員削減を打ち出したりすることになるのではないだろうか。

「メキシコ国境の壁」に象徴される移民問題にも手をつけるだろう。彼は人種差別発言はしていない。「不法入国を防げ」と言っているだけだが、これもまた多くの人々の神経を逆撫でする。

もしかしたら、私たちは久しぶりに大統領暗殺を見られるかもしれない。それでもやろうという心意気を買おうではないか!

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さて、日本ではトランプが中国や北朝鮮に厳しく出てくれるのではないかと幻想を抱いている人もいるようだ。この辺は未知数である。
彼は何事もケンカ腰だが、あれはお互いの主張をぶつけ合って理解し合おうという姿勢で、本質的には話し合いの人に見える。中国や北朝鮮に対しても、交渉による解決を図ると思う。一方、「戦うべき」と判断すれば一気に断行する面もありそうだから、何とも言えない。

中国共産党から見れば、国内の不満をそらす手段として「反日」をあおってきたが、そろそろ効かなくなって、新しい「敵」を必要としている。アメリカはその役にピッタリだ。内心では歓迎しているのではないか。まずは様子を見よう。

いずれにせよ、トランプのことは甘く見ない方がいい。今でこそ否定的な評価が多いが、いずれ逆転する。
日本人もこの気概に満ちた政治家の登場を奇貨として、自分たちの国を正していった方がいいと思うのである。
posted by たぬたぬ at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月17日

トランプがロシアと協調をはかる意義は、どこにあるのか?


トランプは次期大統領就任の直前、16日の英紙タイムズ(電子版)のインタビューに答えて、ロシアへの制裁解除と引き換えに核兵器の削減で合意できる可能性があると語った。

トランプは、なぜロシアとの協調を重視するのだろう?
単純に合理的な説明としては「選挙に際して、ロシアから支援を受けた」くらいしか思いつかないし、実際、「ロシアに弱みを握られている」という報道もあるが、トランプは「CIAが意図的に流したフェイクニュース」だと反論している。
これだけでどちらが正しいかの判断はつきかねる。
現実問題としてみれば、国際政治の力点は中東からアジアへ移っている状況の中で、中国・北朝鮮問題を優先するためにロシアと宥和を進めるのは、そう不自然な判断ではないように思う。

もうひとつ重要なのは、インタビューへの回答通り、「核兵器の削減」だろう。今アメリカの大統領になるということは、斜陽化した大企業の社長になるということである。必要なのはとにかくコスト削減だと、トランプは痛切に感じているに違いない。

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ロシアにとっても、アメリカとの宥和は願ってもないことである。
ロシアの外貨稼ぎの2本柱は、エネルギー資源と武器の輸出である。しかし、中東における武器輸出の主要2国だったシリアとリビアのうち、リビアではカダフィ政権が倒れて、数年先まで決まっていた40億ドルの取引を失った。また、シェールオイル・シェールガスの登場により、石油と天然ガスの価格が下落してしまった。
さらに、ロシアはウクライナ紛争により世界各国から経済制裁を受け、三重苦の状態にあるが、アメリカと宥和が進めば、苦境は大きく打開される。

もうひとつ、ロシア南西部は中央アジアに位置し、そのいわゆる「柔らかい下腹部」ではイスラム原理主義者が跋扈している。ISはこの地域のイスラム教徒の間にシンパを増やして影響力を拡大しようとしている。国の不安定化や、下手すれば分裂につながる危険なものだ。

2011年に起きた「アラブの春」は、確かに「大衆国」の幻想に酔って支離滅裂な政治を行ってきたカダフィをはじめ、貧困な民衆の上にあぐらをかく各国の独裁者を追放し、民主化への期待を垣間見させるものだった。しかし、独裁者という強固なプレッシャーが除かれたことで、ISのような危険分子を解放するパンドラの箱ともなった。

アメリカとロシアがIS撲滅のために共闘すれば、シリアにおけるロシアの影響力の拡大を認めることになるが、「何がマシなのか?」という観点からは、それなりに解のひとつでもあろう。

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少し余談的に過去の復習をする。
2014年2月〜3月、ロシアはウクライナ領のクリミア半島を占拠して併合した。これをもって、「ロシアは歴史上かかわりのあるクリミアという土地にこだわり、武力をもって強奪した」と捉えるのが、世界共通の認識だと思う。日本もG7の一国として、経済制裁に歩を合わせた。

しかし、私はちょっと違うのではないかと考えている。土地にこだわっていたら、こだわるべき土地はロシアの周囲の至るところにあり、国境中で併合作戦を始めなければならない。

そうではなく、単にウクライナがNATOへ参加するのを防ぐのが目的だったのではないか? かつて東側のワルシャワ条約機構と西側のNATOは、互角に対峙していた。しかし、ソ連崩壊に伴ってワルシャワ条約機構が解体したのちもNATOはそのまま残り、ときには国連安保理決議を無視して軍事行動を起こしている。さらに、東側だった国々の中にも、NATOへ参加する国が出てきている。
プーチンはそのことにいらだっており、ドミノ式にNATO参加国が増えるのを阻止しようとしたのではないか?

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ロシアが現代の強国のひとつであることは間違いない。ドイツ内の難民問題をめぐる対立をあおってメルケル政権転覆を謀ったことなども報道されており、危険な国であることも相変わらずだ。
しかし、もはやアメリカやNATOに正面から対抗する力はないし、プーチンにはその自覚もある。ロシアの軍事行動は「限界のある軍事力でロシアの影響圏を維持しよう」というものに過ぎないし、その軍事力もチェチェン紛争では弱体化がはっきりと見てとれた。

中国の膨張を最も大きな問題と捉え、ロシアの件はいったん横に置こうというのが、トランプの考えなのだろう。この見方については、アメリカ政府内でも意見は分れるだろう。ソ連時代から最大の仮想敵国であった記憶が濃厚だし、今でも対立する分野は多いからだ。

それでも、中国・ロシア(ついでに北朝鮮)をいっぺんに相手にするより、ロシアを引き込んで中国に対抗するというトランプの考えは、現実路線として正論なのではないだろうか?
posted by たぬたぬ at 12:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする