2011年04月12日

原発ビジネスの現在と日本の展望

東北大震災後の3月31日、フランスのサルコジ大統領が来日しました。「試練を経験している日本国民に対し、フランスならびに、主要8カ国(G8)と20ヶ国・地域(G20)の議長国として声明を発するため」というのが理由ですが、声明を発表するだけなら、フランスにいてもできます。

この訪問は、サルコジ大統領が中国での国際会議に出席している「ついで」の形で、急遽、フランスから申し入れられました。原発問題と震災処理の対応に追われる菅首相にとって、時間を取られるありがた迷惑なものであり、日本にとって火急の必要はないものでした。そこをゴリ押しする形でサルコジが来日したのは、エネルギーの約80%を原子力に依存し、原発プラントの建設が大きな産業となっているフランスにとって、福島原発の事故処理はフランスの政策とビジネスに大きな影響を与えるからです。
また、フランスは今年G8とG20の議長国となっており、日本の首相と直接意思の疎通を図ることで、円滑に会議を進めていきたいと考えたのでしょう。

菅首相との会談で、サルコジ大統領はG8(主要国首脳会議)で原発事故を取り上げ、その冒頭に菅首相に発言してもらうこと、G20で原子力の安全性について話し合うこと、IAEA(国際原子力機関)で世界的な安全基準について協議すること、年内に世界共通の原発安全基準をまとめることを提案したと伝えられています。
おそらく原発の安全基準などについても、具体的に踏み込んだ提案があったものと思われます。そうでなければ、首脳会談の意味がありません。

          ◇            ◇

さて、フランスは原発プラントの性能や安全性では世界でもトップレベルにある「原発先進国」ですが、そのフランスを抑えて、2009年末、アラブ首長国連邦の原発建設を受注した国があります。韓国です。
アラブ首長国連邦の原発建設は、2020年までに4基の原発をつくる超大型プロジェクトでした。韓国にとっては、他国で原発建設から運営までを手掛ける初めての仕事です。

原発建設の営業は、一般の商取引と異なり、国の指導者がリーダーシップをとる「トップセールス」の形で行われます。建設技術や運転・保守などの管理能力はもちろん、核兵器への転用を防ぐ法体系と組織が整備され、国際社会で総合的な信頼性を評価されて初めて、受注に至るからです。

韓国では、日本の経済産業省にあたる知識経済省が「原子力発電輸出産業化戦略」を策定し、韓国電力が交渉の全面に立って性能や安全性の高さ、価格の安さを訴え、斗山重工業などのプラントメーカーが連携し、最後は李明博大統領自らが関係者に電話や手紙で説得し、訪問するという挙国一致のチーム体制で営業活動を行っています。

ちなみに韓国が提示した保証期間は60年です。韓国で原発が始まったのは1978年ですから、33年の歴史しかありません。将来、トラブルが起きる可能性がありますが、これはどこかの国といっしょで、あとの世代に任せようということでしょう。

           ◇            ◇

原発が重視されるのは、発電時にほとんどCO2を出さないためです。
地球温暖化が急速に進行している現在、CO2を出さずに、巨大なエネルギーを得ることができる原発は、次世代の発電の主軸として期待されています。

問題は、安全性です。
1979年にアメリカのスリーマイル島で起きた原発事故は、アメリカを震撼させ、新規の原発建設は凍結されました。
1986年にロシアのチェルノブイリで起きた原発事故では、ヨーロッパまで放射能の影響が及びました。

しかし、ロシアは「チェルノブイリの経験」を売り文句にセールスを繰り広げ、アメリカでは2010年2月、ジョージア州のボーグル原発2基の建設を決定。30年ぶりに原発建設計画が動き始めました。
この原発の建設を受注したのは、東芝傘下のウェスチングハウスです。
ただし、昨年11月の中間選挙で民主党が大敗し、原発推進計画に陰りが見えていたところに、福島原発の事故が起きてしまいました。2011年に着工し、2016年に運転を開始する予定でしたが、延期か、見直しになる可能性もあるでしょう。

この先も原発を続けるかどうかは、難しい判断です。

原子力発電所は、本来、安全性を重んじれば、決して危険なものではないはずですが、現実には安全性より利益が優先されています。

日本はとくに基準が甘く、3月19日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』では、全世界で稼働している400以上の原発の中に、地震にも津波にも弱い原発が39基あり、そのうち35 基が日本にあると伝えています。
なかでも、東海地震が起きたら大きな被害を受けると予想される静岡県中央部に突き出した御前崎につくられた浜岡原発は、象徴的です。日本の原発は、安全性を無視してつくられています。

さらに福島原発の事故の場合、「老朽化によって起きた」という一面を持っています。東京電力が責任回避のために情報誘導を図っているような「想定外の地震と津波によって起きた」というだけではありません。

日本の原発プラント会社は、東芝、三菱重工業、日立製作所の3つです。このうち、アメリカのウェスチングハウスを買収して傘下に加えた東芝がリードしていましたが、国の原子力政策の信頼そのものが失墜した現在、ウェスチングハウスは別として、3社とも世界で他国のメーカーに対抗していくのは、難しいでしょう。

もちろん「事故の教訓を生かして、原発増設を進めるべきである」という意見はあるでしょう。それが政府の考えであろうと、容易に推測もできます。
しかし、私は、新エネルギーに活路を見い出すのも、戦略としてあり得るのではないかと考えています。
たとえば、電力会社が民家の屋根を借りる形で、太陽光発電パネルを設置するという方法もあります。
日本にはアメリカやオーストラリアの砂漠のような大規模な砂漠はありませんが、民家の屋根を使えば、土地を有効に活用できます。また太陽光パネルは高価なので、補助金制度があっても自費で設置できる家庭は多くありませんが、月々の使用料という形なら、無理はありません。屋根の使用料として、今までより電気料金が安くなるなら、多くの人は喜んで応じるでしょう。

原発1基の建設にかかる費用は、3000億〜5000億円ほどです。数基つくる資金があれば、膨大な太陽光パネルを設置できます。

日本国内で、今後、新規の原発建設が当分不可能になることは、スリーマイル島の事故後、30年間、アメリカで新規の原発建設が凍結された経験からも、ほぼまちがいないでしょう。海外市場でも、苦戦は必至です。
日本の原子力産業の沈滞が見えているという意味でも、日本はエネルギー戦略を根本から見直すべきかと思います
posted by たぬたぬ at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | エネルギー問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする